2019/02/19
セキュリティの強化と業務の効率化を両立させる方法
株式会社ディー・ディー・エス 専務取締役 兼 営業本部長 久保 統義

2017年5月に施行された改正個人情報保護法、2019年4月に施行される働き方改革関連法により、日本における情報セキュリティに今まで以上の関心が集まっており、企業にとってセキュリティ強化は急務である。しかし、「セキュリティを強化するほどシステムは使いにくくなり、事業遂行に支障をきたしかねない」と、二の足を踏む経営者は少なくない。そんななか、「生体認証を含む複数の要素で本人確認を行えば、システムはむしろ使いやすくなる」と、ディー・ディー・エス専務取締役の久保氏は指摘する。同社は特許取得の生体認証テクノロジーを駆使して、法人向けの指紋認証市場でトップシェアを誇る。業務を効率化しつつセキュリティを強化する要諦について、同氏に聞いた。
多要素認証により可用性が向上
── システムのセキュリティ強化について、多くの企業が課題感をもっていると思います。しかし、とりわけ中小企業で対策が進んでいないのが実情です。原因はどこにありますか。
「セキュリティ実装はシステムの可用性を悪化させる恐れがある」というイメージが強いことです。中小企業は、売上拡大や業務効率化が見込めるものに対しては積極的に投資します。でも、「業務を非効率にして、売上ダウンを招きかねない」というイメージのあるセキュリティ投資には消極的です。
── 「IDやパスワードをどこかに書きとめるのはNG」「3ヵ月ごとに新しいパスワードに変更しおぼえなくてはならない」「ひとつの作業を始めるまでに何種類ものパスワードを入力しなければならない」…。確かに、セキュリティを強化すると業務効率は落ちますね。
いいえ。生体認証技術を適用した多要素認証ソリューションを導入すれば、セキュリティを強化しつつ、むしろ業務効率を上げられます。たとえば、私たちが提供している多要素認証基盤『EVE MA』や、二要素認証基盤『EVE FA』、万能認証基盤『Themis』を利用すれば、様々なシステムへのアクセスが容易になります。
指紋をはじめとした、みなさんが「常に持っているもの」があればよく、IDやパスワードを何種類もおぼえたり、頻繁に変更したりする必要はなくなります。ですから、むしろシステムの可用性を高めることになり、業務効率がアップします。
指紋をはじめとした、みなさんが「常に持っているもの」があればよく、IDやパスワードを何種類もおぼえたり、頻繁に変更したりする必要はなくなります。ですから、むしろシステムの可用性を高めることになり、業務効率がアップします。

登録拒否率0%の指紋認証ソリューション
── 『EVE MA』『EVE FA』『Themis』を導入して、セキュリティを強化させた成功事例を教えてください。
では、釧路市さんの事例を紹介しましょう。マイナンバー制度の導入によるセキュリティ強化の一環として、総務省の補助を受けて多要素認証ソリューションを導入したものです。
私たちのソリューションを選んでいただいた理由は、大きく3点ありました。ひとつは、デスクトップへのログオンだけでなく、業務アプリケーションのログオンにも使用可能という点。もうひとつは、業務アプリケーション側のシステム改修が不要で、すぐに認証対応が可能な点。そして3つ目は、アクティブディレクトリ(Active Directory)を使用したIDの一元管理により、運用負荷を軽減できる点です。
多要素認証ソリューションのなかには、デスクトップへのログオンにしか対応しておらず、そこから業務アプリケーションを使おうとすると、IDやパスワードの入力が必要になるものもあります。「業務アプリケーションにも対応」とうたっていても、業務アプリケーション側でのシステム改修が必要なものや、「運用に際しては、結局のところ、業務アプリケーションごとにアクセス権限の設定・更新を行わなければいけない」といった問題が出るものもあります。『EVE MA』『EVE FA』『Themis』はシステムの改修や設定変更などの手間をかけることなく、問題なく業務アプリケーションに適用することができます。
人事異動が頻繁な公共機関において、その都度、業務アプリケーションの設定を変更していたら大変な手間がかかります。とはいえ、税金を使う以上、システム改修に大きな予算は割けません。私たちのソリューションがニーズに合致したわけです。
導入にあたり、釧路市さんの担当者の方は、指紋認証の登録拒否率を気にかけていらしたようです。「私の指紋が登録できない」という問題が起きるのではないか、と。しかし導入直後から今日まで、指紋認証の登録成功率は100%をキープしています。
私たちのソリューションを選んでいただいた理由は、大きく3点ありました。ひとつは、デスクトップへのログオンだけでなく、業務アプリケーションのログオンにも使用可能という点。もうひとつは、業務アプリケーション側のシステム改修が不要で、すぐに認証対応が可能な点。そして3つ目は、アクティブディレクトリ(Active Directory)を使用したIDの一元管理により、運用負荷を軽減できる点です。
多要素認証ソリューションのなかには、デスクトップへのログオンにしか対応しておらず、そこから業務アプリケーションを使おうとすると、IDやパスワードの入力が必要になるものもあります。「業務アプリケーションにも対応」とうたっていても、業務アプリケーション側でのシステム改修が必要なものや、「運用に際しては、結局のところ、業務アプリケーションごとにアクセス権限の設定・更新を行わなければいけない」といった問題が出るものもあります。『EVE MA』『EVE FA』『Themis』はシステムの改修や設定変更などの手間をかけることなく、問題なく業務アプリケーションに適用することができます。
人事異動が頻繁な公共機関において、その都度、業務アプリケーションの設定を変更していたら大変な手間がかかります。とはいえ、税金を使う以上、システム改修に大きな予算は割けません。私たちのソリューションがニーズに合致したわけです。
導入にあたり、釧路市さんの担当者の方は、指紋認証の登録拒否率を気にかけていらしたようです。「私の指紋が登録できない」という問題が起きるのではないか、と。しかし導入直後から今日まで、指紋認証の登録成功率は100%をキープしています。
── 民間企業の成功事例もシェアしてください。
埼玉県に本社があり、LPガスの一般ユーザーからガスの残量情報やガス漏れ警報などを受信するサービスを提供している、JA-LPガス情報センターさんのケースをお話ししましょう。一般ユーザーの個人情報を扱うので、セキュリティには万全を期す必要がある一方で、ガス漏れへの対応などは寸秒を争う。IDやパスワードを使った認証システムから、私たちの指紋認証へと切り替えたことで、業務効率を大幅に向上できたそうです。
また、旅行会社が一般ユーザーから旅行予約を受け付けるプラットフォームを提供している、ウィ・キャンさんのケース。旅行会社にとっては自社で予約システムを構築するよりも低コストです。セキュリティのために指紋認証機能を早期から入れていましたが、Windows10への移行にともない、Windows10上で動作する私たちの指紋認証SDKに切り替えたのです。ID入力が不要な1:N認証で、ご利用ユーザー様を特定できるようになり、「5,000名の方が利用する ウェブシステムにおいて、信頼された認証エンジンとして日々稼働している」とのことです。
また、旅行会社が一般ユーザーから旅行予約を受け付けるプラットフォームを提供している、ウィ・キャンさんのケース。旅行会社にとっては自社で予約システムを構築するよりも低コストです。セキュリティのために指紋認証機能を早期から入れていましたが、Windows10への移行にともない、Windows10上で動作する私たちの指紋認証SDKに切り替えたのです。ID入力が不要な1:N認証で、ご利用ユーザー様を特定できるようになり、「5,000名の方が利用する ウェブシステムにおいて、信頼された認証エンジンとして日々稼働している」とのことです。
名刺からのテレアポが営業の重荷だった
── 『EVE MA』『EVE FA』『Themis』の販促について聞かせてください。広く普及させていくうえで、どんな課題がありましたか。
まず、大きな課題として「認知度不足」がありました。私たちの競合は大手企業。たとえばテレビコマーシャルや新聞広告、大きな展示会への出展といった手段でブランド力不足を補おうとするなら、大きなコストがかかります。そこで私たちが選択したのは、販売パートナーを増やすということでした。いま、私たちのソリューションの認定販売パートナーは94社。社員50名規模の会社ながら、多くの企業に評価していただけました。
そして、パートナー企業が開催するイベントで、私たちのソリューションについて展示させていただくという方法で露出を増やし、認知度を上げているのです。さらに、イベントへの出展の副次的成果として、参加者の方から名刺を獲得できます。しかし、これを販促に活用する段階で、新たな課題が生まれました。
そして、パートナー企業が開催するイベントで、私たちのソリューションについて展示させていただくという方法で露出を増やし、認知度を上げているのです。さらに、イベントへの出展の副次的成果として、参加者の方から名刺を獲得できます。しかし、これを販促に活用する段階で、新たな課題が生まれました。
── 具体的に教えてください。
主に3つありました。ひとつは、リードタイムが長いお客さまへの対応がおろそかになってしまったこと。イベントで獲得した名刺のデータは、営業スタッフでわけあい、各自が電話をかけてアポを取り、訪問して成約へと結びつけていきます。しかし、営業はどうしても、「すぐに成約に結びつく案件」を重視しがち。「いまはニーズがないが、半年後・1年後には検討する可能性がある」というお客さまのことは放置してしまいがちなのです。
もうひとつは、営業がテレアポ担当を務めることで、訪問や提案といった営業本来の活動に割く時間が少なくなり、営業活動量が低下してしまいました。 そして最後に、テレアポの品質が低く、非効率だったこと。営業はテレマーケティングについてのトレーニングを受けておらず、また統一したトークスクリプトも用意していなかったので、当然です。
結局、営業にしてみれば名刺の数が多いほど、非効率なテレアポの仕事が増え、本来の営業活動ができず、成績が上がらない。いきおい、「名刺なんかほしくない」という気分が醸成され、イベントでの名刺獲得活動も低調になってしまうという悪循環に陥っていたのです。この状況を打開しようと、『SALES BASE』の導入を決めました。
もうひとつは、営業がテレアポ担当を務めることで、訪問や提案といった営業本来の活動に割く時間が少なくなり、営業活動量が低下してしまいました。 そして最後に、テレアポの品質が低く、非効率だったこと。営業はテレマーケティングについてのトレーニングを受けておらず、また統一したトークスクリプトも用意していなかったので、当然です。
結局、営業にしてみれば名刺の数が多いほど、非効率なテレアポの仕事が増え、本来の営業活動ができず、成績が上がらない。いきおい、「名刺なんかほしくない」という気分が醸成され、イベントでの名刺獲得活動も低調になってしまうという悪循環に陥っていたのです。この状況を打開しようと、『SALES BASE』の導入を決めました。

月間17.8%のアポ率を達成
── 『SALES BASE』を導入したことで、販促においてどんな成果がありましたか
3つの課題すべてが解決できました。まず、リードタイムが長いお客さまについて、『SALES BASE』を通してフォローできるようになりました。半年後なり、1年後なりに再度電話して、アポをとるわけです。また、当社の営業が訪問した結果、リードタイムが長いと判明した案件のフォローも『SALES BASE』に依頼しています。これにより、営業の機会損失を防ぐことができます。
営業をテレアポ業務から外し、本来の営業活動に専念させるという点でも、期待以上の成果がありました。テレアポから外れただけでなく、スケジュール調整の手間も大幅に省けました。『SALES BASE』のおかげで、「アポイントの予定が自動的に設定される」からです。
テレアポの効率でいえば、「さすがエキスパート」という成果が出ています。昨年の平均値では5.7%のアポイント率。いちばん多かったときには月間17.8%という数値を出してくれました。アポイントの質の面でも、事前に当社側と綿密に打ち合わせて、トーク内容を決めているので、成約につながりやすいアポを設定してもらっていると実感しています。たとえば「働き方改革がテーマのイベントで獲得した名刺の相手には、セキュリティ強化よりも業務効率化につながるメリットを強調したトークにする」といった具合です。
『SALES BASE』という専門部隊にまかせ、テレアポの効率が上がったことにより、「名刺は多ければ多いほどいい」という状況になりました。結果、イベント時の名刺獲得活動にも熱が入り、いまでは以前の3倍、年間で約1万枚の名刺を獲得しています。
営業をテレアポ業務から外し、本来の営業活動に専念させるという点でも、期待以上の成果がありました。テレアポから外れただけでなく、スケジュール調整の手間も大幅に省けました。『SALES BASE』のおかげで、「アポイントの予定が自動的に設定される」からです。
テレアポの効率でいえば、「さすがエキスパート」という成果が出ています。昨年の平均値では5.7%のアポイント率。いちばん多かったときには月間17.8%という数値を出してくれました。アポイントの質の面でも、事前に当社側と綿密に打ち合わせて、トーク内容を決めているので、成約につながりやすいアポを設定してもらっていると実感しています。たとえば「働き方改革がテーマのイベントで獲得した名刺の相手には、セキュリティ強化よりも業務効率化につながるメリットを強調したトークにする」といった具合です。
『SALES BASE』という専門部隊にまかせ、テレアポの効率が上がったことにより、「名刺は多ければ多いほどいい」という状況になりました。結果、イベント時の名刺獲得活動にも熱が入り、いまでは以前の3倍、年間で約1万枚の名刺を獲得しています。
業種や職種に特化して市場を開拓
── 今後、『EVE MA』『EVE FA』『Themis』をどのように広めていきますか。ビジョンを聞かせてください。
民間企業の業種・職種ごとに特化したソリューションを提案することで、マーケティング活動をより強化していく方針です。たとえば、製造業における品質管理の場面では、資格者の本人確認が必要。そこでの活用に特化したソリューションとしての打ち出し方をすることも視野に入れています。
ほかにも、医療業界でも案件が増えているので、医療関係者を対象として電子カルテとの連携を提案するのもいいですね。さらに教育機関では、先生のサービス残業を阻止するための「勤怠管理システムとの連携」というのもニーズがあるとみています。今後も、現場のニーズをいち早く察知して、新たなコンテンツ開発に挑み続けます。
ほかにも、医療業界でも案件が増えているので、医療関係者を対象として電子カルテとの連携を提案するのもいいですね。さらに教育機関では、先生のサービス残業を阻止するための「勤怠管理システムとの連携」というのもニーズがあるとみています。今後も、現場のニーズをいち早く察知して、新たなコンテンツ開発に挑み続けます。