2018/06/25
経営者が働き方改革に本気なのか。オフィスを見ればわかります
株式会社 Phone Appli 取締役 副社長 営業本部 本部長 中川 紘司

東京・神谷町。Web電話帳アプリをはじめコミュニケーション効率化支援の各種サービスを展開するPhone Appliのオフィスに入る。目に映るのは、植物の緑やピンと張られた大きなテント、アウトドア用のチェアーやテーブル──。まるでキャンプ場だ。一方で、すべてのミーティングスペースにビデオ会議用のディスプレイを設置、最先端IT企業らしさも。同社の取締役副社長の中川氏は「働き方改革を追求した結果、行きついたのがこのオフィスです」と語る。国が旗を振る働き方改革への対応で、試行錯誤を重ねている経営者は、いちど、「働き方改革を実現した姿」であるPhone Appliのオフィスを訪ねてみればいい。画期的なオフィスデザインの背景にあるものを同氏に聞いた。
人事と総務と情シスの間に壁が
── 働き方改革のために、多くの企業がさまざまな施策を講じています。しかし、あまり効果が出ていません。なにが問題なのでしょう。
「ルール」「ツール」「プレイス」がバラバラに検討され、首尾一貫していないことです。理想的な働き方改革推進のあり方は、まず自社の企業理念やミッション、カルチャーに照らし合わせて、どんな労働の制度がよいのか、「ルール」を定めます。次に、そのルールを適用するために、どんなITを導入するのが適切か「ツール」を選びます。最後に、そのツールをフル活用して社員が最大のパフォーマンスを発揮してくれるオフィスのデザイン、すなわち「プレイス」を設計するべきです。
たとえば、ITエンジニアのように、いつでもどこでも作業できる社員が多い、そんな企業だとします。「納期までに一定の品質の成果物を提出できれば、テレワークを選択できる」という「ルール」を定める。このルールを適用するために、社外で高度な作業ができるデバイスや、セキュリティを確保できるシステムなどの「ツール」を導入する。そのうえで、社外にいる社員と社内にいる社員とがうまくコラボできるように、ビデオ会議システムをそなえたミーティングルームといった「プレイス」を設計する。それが本来のあり方です。
たとえば、ITエンジニアのように、いつでもどこでも作業できる社員が多い、そんな企業だとします。「納期までに一定の品質の成果物を提出できれば、テレワークを選択できる」という「ルール」を定める。このルールを適用するために、社外で高度な作業ができるデバイスや、セキュリティを確保できるシステムなどの「ツール」を導入する。そのうえで、社外にいる社員と社内にいる社員とがうまくコラボできるように、ビデオ会議システムをそなえたミーティングルームといった「プレイス」を設計する。それが本来のあり方です。
── 確かにそうですね。なぜ、バラバラになってしまうのですか。
「ルール」は人事や経営企画部門、「ツール」は情報システム部門、「プレイス」は総務部門の担当で、お互いに連携することなく、意思決定してしまうからです。人事が「競合他社でもやっているからフレックスタイム制度を取り入れよう」と言う。情シスは「いま、いちばん最先端のビデオ会議システムを入れましょう」と提案してくる。総務は「社員数が増え、そろそろオフィス移転の時期です。やはり渋谷か六本木のビルがいいですよね」といった具合です。
バラバラに意思決定した結果、なにが起きるか。新制度は機能せず、導入したITは活用されず、移転先のファシリティに社員からの不平不満の嵐──。働き方改革に失敗してしまうわけです。
バラバラに意思決定した結果、なにが起きるか。新制度は機能せず、導入したITは活用されず、移転先のファシリティに社員からの不平不満の嵐──。働き方改革に失敗してしまうわけです。

ガラス張りの小部屋の機能とは
── 異なる部門の利害を調整し、統合するのは、経営陣の役割だと思います。
その通りです。「ルール」「ツール」「プレイス」がバラバラに検討され、働き方改革に失敗してしまうのは、経営者が本気で取り組んでいないからとも言えます。働き方改革を推進した結果があらわれる「プレイス」、つまりその会社のオフィスを見れば、働き方改革に経営者が本気で取り組んでいるかどうかわかるのです。
── 「ルール」「ツール」「プレイス」を首尾一貫させて決定した、成功事例を教えてください。
わかりました。当社の例でお話ししましょう。当社では、期初に全社員一人ひとりについて、達成するべき数値目標が、社員本人の意向と上長の面談を踏まえて設定されます。その目標の達成度合いで期末に評価されるのです。計測可能な目標が設定されるため、評価に対する本人の納得度が高い。とはいえ、期中にさまざまな問題が発生し、目標達成があやうくなることもしばしば。そんなとき、ひとりで悩み、仕事へのモチベーションが下がり、ますます成績が落ちるという悪循環になりがちです。
それを防ぐため、毎週1回、直属の上長と社員が1対1で面談することを義務づけています。目標を達成するうえで、なにか問題は起きていないかヒアリング。問題があれば解決策をアドバイスしたり、元気づけてやるわけです。
それを防ぐため、毎週1回、直属の上長と社員が1対1で面談することを義務づけています。目標を達成するうえで、なにか問題は起きていないかヒアリング。問題があれば解決策をアドバイスしたり、元気づけてやるわけです。
── 毎週ですか!
ええ。私たちはこの面談を「ルール」と位置づけ、「1 on 1 Meeting」と呼んでいます。この「ルール」をもうけた目的は、社員に対するヒアリング。だから、上司のほうが多くしゃべっているようでは、目的に反するわけです。
── 説教したり、自分の経験談を話したがる上司が多いのではありませんか。

そうなりがちですよね(笑)。そこで、私たちは音声の解析システムを「1 on 1 Meeting」に導入しました。2人の発話量をセンサーで測定して、面談終了後には自動的に上司と部下の発話量がクラウド上でフィードバックされます。つまり、部下の話を聞くための面談になっているかチェックしているのです。「ルール」を効果的に運用するために最適な「ツール」を導入したわけです。
そのうえで、「1 on 1 Meeting」用のブースをもうけました。「プレイス」のデザインです。透明なガラスに囲まれているものです。面談している声は外に聞こえませんが、「あ、あそこの部署のAマネジャーとB君がいま、面談しているな」と、丸わかりです。このブースは「1 on 1 Meeting」以外での使用は禁止。全社員に義務づけられている面談のため、ガラス張りでもほかの社員の目が気にならないのです。
そのうえで、「1 on 1 Meeting」用のブースをもうけました。「プレイス」のデザインです。透明なガラスに囲まれているものです。面談している声は外に聞こえませんが、「あ、あそこの部署のAマネジャーとB君がいま、面談しているな」と、丸わかりです。このブースは「1 on 1 Meeting」以外での使用は禁止。全社員に義務づけられている面談のため、ガラス張りでもほかの社員の目が気にならないのです。
オフィスコスト低減もはかれる
── なるほど。ただ、中小・ベンチャー企業はオフィスに大きな予算をさけないケースが多いです。
きちんと設計から考えれば、むしろコストの削減になる場合が多いですよ。たとえば、当社ではアウトドア用品大手のスノーピーク製のアウトドアチェアーやテーブルをふんだんに取り入れています。通常のオフィスにあるイスやデスクよりはるかに低価格。アウトドアでも使えるモノですから、コンパクトに収納できる。社員が帰ったあとに片づけて、100名程度収容できるセミナー・イベント用のスペースをつくることが可能。このスペースを専用に確保するのにかかる年間約5,000万円の賃料が節減できています。
── Phone Appliさんのオフィスを見学することはできますか。
ええ。随時、見学ツアーを募集していますので、申し込んでもらえればと思います。ある不動産系の大手企業で、働き方改革に関わる全社員、実に100人以上がツアーに参加した例もあります。経営者が「部署や役職の垣根を越えて、働き方改革に関わる全社員がひとつの考え方・価値観を共有する必要がある」と判断した結果です。
どんな「ルール」を取り入れ、どんな「ツール」を導入した結果、いま見学している「プレイス」になったのか。ことこまかに当社のスタッフが説明します。「働き方改革に本腰を入れて取り組みたい」という企業で、改革推進の旗を振る立場にある方は、ぜひ見学に来てください。必ず、目からウロコの発見があるはずですから。
どんな「ルール」を取り入れ、どんな「ツール」を導入した結果、いま見学している「プレイス」になったのか。ことこまかに当社のスタッフが説明します。「働き方改革に本腰を入れて取り組みたい」という企業で、改革推進の旗を振る立場にある方は、ぜひ見学に来てください。必ず、目からウロコの発見があるはずですから。